私たちがお墓参りで目にする墓石には様々な種類があります。馴染み深いのは石が積み重なっている和型の墓石でしょう。他にも形状・石材・宗教などによって分類されます。宗派にとらわれない自由な形の墓石もあります。本記事では墓石について詳しく解説していきます。
どんな種類があるの?
墓石には大きく分けて、「和型」「洋型」「デザイン型」の三種類があります。それぞれの特徴についてみていきます。
和型

構造名 | 説明 |
---|---|
竿石(さおいし) | 一番上。碑文(○○家之墓など)を刻む |
上台 | 中段。竿石を支える |
下台(芝台) | 土台部分。最も大きくて安定感あり |
日本で最も一般的な墓石スタイルで、基本は三段重ねの構造となっています。和型墓石は縦長で、上に向かって高く伸びる形が特徴です。これは「天に祈りを捧げる」「仏に近づく」といった意味合いが込められています。竿石には「○○家之墓」や「南無阿弥陀仏」などの文字が彫られます。伝統的に縦書きで彫られることが多く、宗派や地域によって表現が異なることもあります。
洋型

日本の伝統的な和型墓石とは異なる、西洋スタイルのデザインを取り入れた墓石のことを指します。背が低く横長のデザインが主流(横型・プレート型など)となっています。シンプルで彫刻やデザインの自由度が高く、名前だけでなく、絵柄・メッセージ・シンボルなども入れやすいのが特徴です。和型が縦長なのに対して低重心のため地震などにも強く安定性があります。
デザイン型

従来の和型や洋型といった定型にとらわれず、自由な形状やコンセプトで作られたオリジナル性の高い墓石のことを指します。見た目だけでなく、故人の個性や家族の想いを形にできる点が特徴です。形状はハート型、円形、曲線的なフォルムなど様々なものから選択できます。故人の趣味や職業、想い出をかたどったデザインも可能(例:楽器や花、星など)です。
石材の種類
墓石に使われる石材には、見た目・硬さ・耐久性・価格などの違いがあります。海外産は国産に比べて価格が安価なものが多いですが、一部の石材は経年で変色や退色することがあったり産地により品質差もあるのがデメリットです。対して、国産石材は品質が高く風化にも強いことから格式や信頼感があります。以下に、よく使われる国産の代表的な石材の種類と特徴をわかりやすくまとめました。
国産石材(品質重視・高級志向向け)

石材名 | 主な産地 | 特徴 | 相場感 |
---|---|---|---|
庵治石(あじいし) | 香川県 庵治地方 | 日本の石材の中でも最も格式が高く、「世界一美しい石」と称されることもある。緻密で美しい斑(ふ)が特徴。 | 非常に高価 |
大島石 | 愛媛県今治市 瀬戸内海の大島 | 上品な青みが特徴。細目で均一、見た目が美しく上品。硬くて水を吸いにくく経年劣化しにくい(風化に強い) | 高価 |
天山石 | 佐賀県唐津市 天山地区 | 吸水率が低く(0.1%未満)、非常に硬くて劣化しにくい。 | やや高め |
真壁小目石 (まかべこめいし) | 茨城県桜川市 旧・真壁町 | 歴史が深く、江戸時代から墓石や石垣に使われてきた伝統的な石材。グレーで落ち着いた風合い。安定した品質。 | 中価格帯 |
稲田石 | 茨城県笠間市 稲田地区 | 白系の明るい石。加工しやすく和洋問わず人気。 | 中価格帯 |
墓石と宗教の関わり
墓石と宗教の関わりは非常に深く、宗教や宗派によって墓石の「形」「刻まれる文字」などが大きく異なります。墓は単なる遺体の埋葬場所ではなく、信仰・供養・祖先への敬意を表す宗教的な象徴でもあります。
仏教の場合

日本で最も一般的な宗教で、「供養の場」であり「先祖と向き合う場所」として墓石を建てます。墓石の正面文字は「○○家之墓」「南無阿弥陀仏」など、宗派により異なります。僧侶から授けられる名前である戒名・法名は墓誌や墓石の側面に彫られることが多いようです。他にも宗派ごとの違いがいくつかあります。
宗派 | 墓石の特徴 |
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浄土宗 | 「南無阿弥陀仏」などを正面に刻むことが多い。 |
浄土真宗 | 戒名ではなく「法名」。念仏重視で焼香中心、墓前で手を合わせ念仏を唱える。 |
曹洞宗 | 墓前での読経重視、墓石に「釈○○」などの戒名。 |
日蓮宗 | 「南無妙法蓮華経」と刻む、題目を唱える。 |
神道の場合

神道では「奥津城(おくつき)」と呼ばれる独自の形式と作法があります。洋型や縦型のシンプルな形が多いですが、仏式の和型と見た目が似ていることもあります。お墓には「〇〇家 奥津城」と刻まれるのが最も代表的で、戒名は使わず、実名と命日を刻みます。
キリスト教の場合

洋型墓石が多く、白御影石など明るい石材が好まれる傾向にあります。故人の名前と生没年月日を記すし、聖書の一節や十字架を彫刻します。「R.I.P.(Requiescat in pace/安らかに眠れ)」の表記も一般的です。
まとめ
一般的には和型が主流な墓石ですが、洋型や個性を表現できる墓石もあることがわかりました。雨ざらしになることが多いお墓なので水分や経年による劣化を避けるためにも石材選びもとても重要なポイントです。お墓詣りに出向いた際にはほかの家庭のお墓に目を向けてみるとオリジナリティあふれる墓石を見つけることができるかもしれません。是非お墓を建立する際の参考にしてみてください。