木魚って必要なの?木魚の歴史と選び方

仏具・仏事の豆知識

お坊さんがお経を読み上げる際、ポクポクというリズミカルな心地よい音を耳にします。これは木魚を叩いている音です。何気なく使用される木魚ですが、具体的にどのような用途で使われているのでしょうか?この記事ではあまり知られていないであろう木魚の様々な事柄について解説します。

木魚とは?

木魚とは、僧侶が読経を行う際に叩いて慣らすための木製の道具です。鈴のような丸みのある形で大きな割れ目があり、中が空洞になっています。魚のうろこの模様が彫られているのが特徴です。

木魚を叩く際には、先端に布や皮を巻いたバチを用います。それらのバチは「木魚バチ」「木魚バイ」「木魚しもく」と呼ばれます。

木魚の中を空洞にすることで、バチで叩いたときに特徴的な「ポクポク」という音を奏でることができます。

一般的には仏壇に置く小さめのサイズがなじみ深いですが、本格的なお寺ではかなりの大きさの木魚がある場合もあるようです。それらの音色もサイズによって異なります。

木魚の用途

木魚は読経の際に打ち鳴らすことでお経のリズムを整える用途があります。絶えず打ち鳴らすことで、寝る間を惜しんで修業をする僧侶の眠気覚ましとしても使われたようです。

木魚は読経の際だけでなく楽器としても使われています。清朝時代の中国では民衆音楽の楽器として用いられたとされており、日本でも特に歌舞伎の下座音楽の楽器として用いられます。特に歌舞伎の中の寺院が登場する場面で木魚の音が奏でられます。

近年では木魚を原型とする「テンプル・ブロック」と呼ばれる楽器が西洋で開発され、クラシックやジャズのリズム楽器として用いられています。西洋といえども木魚の柔らかい音色は変わらないようです。

木魚は仏具でありながらも、楽器という側面も持っている道具であるといえるでしょう。

木魚の歴史

木魚の本格的な伝来は江戸時代、黄檗宗の高僧である隠元法師によるものとされています。当時の木魚は今より大きく平たく、より魚に近いデザインで、時刻を知らせる鐘として使用されていました。

かつて平たい形をしていた木魚が丸くなり、本格的に今の用途で用いられるようになったのは明治時代とされています。かつては禅宗のお寺のみで用いられていた木魚ですが、広まる過程で様々な仏教宗派で用いられるようになりました。

木魚はなぜ魚の形?

木魚はその名の通り魚をモチーフにしており、外側には魚の鱗を模した文様が彫られます。では魚をかたどる意味とは何なのでしょうか?

魚は眠っている時でも目を瞑らない習性があり、昔の人はこの習性を見て「魚は眠らない生き物だ」と解釈しました。これが転じて、「魚のように眠らず修業しなさい」という意味が込められるようになったのです。実際に木魚には眠らず修業出来るよう、眠気覚ましとしての役割もあります。

木魚と使用する宗派は?

木魚を使う主な宗派

  • 禅宗
  • 天台宗
  • 浄土宗
  • 真言宗
  • 曹洞宗
  • 臨済宗
  • 黄檗宗 など

魚を使う主な宗派は、禅宗や浄土宗、天台宗です。お寺や地域によって異なる場合もありますが、どの宗派も木魚の由来にある「煩悩を払い自身を清める」という意味や、「リズムを整える」といった意味で木魚を使用しています。

木魚の叩き方は、宗派によって異なります。お経の発声と同時に叩く「頭打ち」の宗派が多いですが、浄土宗では「裏打ち」で木魚を叩きます。

裏打ちとは、僧侶の唱えるお経の邪魔をしないよう、発声する文字と文字の合間に木魚を叩く方法です。聞き慣れていないと、独特のリズムに感じることもあるでしょう。

木魚を使わない宗派

  • 浄土真宗
  • 日蓮宗
  • 法華宗 など

仏具として歴史ある木魚ですが、すべての宗派において使われているわけではありません。例えば浄土真宗では、「他力本願(自分の力ではなく、阿弥陀仏の力によって救われる)」という教えがあります。阿弥陀仏ではない人間は、眠気を抑えてまで修行するのは難しいと考えられているのです。

木魚は不眠不休の象徴でもあるため、浄土真宗の教えには合いません。

一方、日蓮宗や法華宗では、木魚ではなく「木柾(もくしょう)」を使用します。木魚と同じ木製の仏具ですが、形は丸く、魚のうろこの模様は彫られていません。ポクポクと鳴る木魚に対し、木柾はカンカンという高い音がします。

どうして読経中に木魚を叩くの?

では、そもそも、どうして読経中に木魚を叩いているのかをご存知でしょうか?

・眠気覚ましのため

木魚が使われるようになった理由の一つが、読経中の眠気覚ましのためという説。
これは木魚のモチーフである魚には、「昼夜問わず目を開けている魚のように、修行僧は常に怠けずに修行に勤しみなさい」という意味が込められているのです。
読経はどうしてもリズムが単調のため、厳しい修行をしている修行僧にとってはつい眠気が忍び寄ることもあるようです。
そこで、木魚を鳴らしながら読経をして眠気対策をしていると言われています。

・リズムをとるため

木魚を同じリズムで鳴らし続けることで、読経のリズムが崩れるのを防いでいるという説もあります。
ピアノなど楽器を演奏するときのメトロノームのように、読経のスピードが安定しやすくなるのだそうです。

・煩悩を吐き出している

かつての平たい魚の形木魚は、口の部分に「煩悩の珠」があしらわれており、木魚を叩くことでその口から煩悩を吐き出していると考えられていました。
つまり読経中に精神統一ができるよう、木魚を叩くことで煩悩をなくしているという説も。
実際、私たちが木魚の音を聞いていても、心が落ち着き厳かな気分になりますよね。
ご先祖様の供養をする大切な法要中は、普段の喧噪を忘れて心を無にできる時間とも言えるでしょう。

家庭で使う木魚はどんなものを購入したらいいの?

木魚は仏壇・仏具店やネットショップなどで購入可能です。

一般家庭では五寸~六寸(約15~18cm)が多く使われています。しかし、近年は住宅事情に合わせた小さいサイズの仏壇を用意する家庭も多く、それに合わせて木魚も小さいサイズを選ばれる方が増えています。木魚のサイズに迷った際は、購入する店舗に相談すると良いでしょう。

また、木魚を乗せる布団や倍(バイ)も一緒に購入する必要がありますが、セットで販売されていることも多いです。

同じ大きさの木魚でも彫刻や材料の種類によって値段が異なりますので、ご自身の予算や希望を考慮して選ぶと良いでしょう。

木魚の材質

木魚は、楠(くすのき)、栓(せん)、欅(けやき)、桑(くわ)といった木が使用されます。素材別の特徴は以下の通りです。

素材特徴
太く育つため大きい材料を取り出しやすく、寺院の木魚にも良く使われている。桑に比べると色が白っぽい。
やわらかい材質で、かつて桐の代わりとして使われていた。最近は価格が高騰しているため、使われることが少なくなっている。
楠や栓と比較すると硬めの材質だが、木目が良く出る。
ほかの種類と比較すると硬めの材質だが、木目が良く出る。しかし、木目の揃った材料が取り出しにくい。高級な素材となり高価。時間の経過とともに色が黒くなってきて、風合いが出る。

天然の素材なので、1つ1つ音色や木目の出方が異なります。店頭などで

彫刻のデザイン

デザイン
上彫り複雑な曲線や渦紋を刻むなど、凝った高級仕様のデザイン。左右に彫られた2匹の龍が一つの珠をくわえ、本体部分には魚のうろこ模様を施した竜頭魚身のデザインが多い。魚から龍となった故事「登竜門」をモチーフにしたものとされている。
並彫り上彫りを簡略化したデザイン。ほかのデザインと比較して安価。
龍彫り造りは上彫りと同じだが、細かい部分まで複雑な装飾を彫ったデザイン。素材も色合いが良く、最高品質のものが使用される。
鯱彫り頭は虎で姿は魚、尾ひれは常に空を向き背中に幾重ものとげを持っている伝説の動物を刻んだデザイン。

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木魚はどこに置く?

木魚を仏壇に置くときは、仏壇手前の右側に置きます。配置としてはリンが左側、木魚が右側というのが一般的です。

木魚の口は、一般的に叩く人の反対側に向けるのが正しいです。反対側に木魚の穴が向くように配置してください。

まとめ

木魚の意味や歴史、宗教との関わり、購入について解説しました。

普段何気なく目にする木魚ですが、実はその形や用途にはしっかり意味があることがわかります。次に読経を聞く機会には、木魚を叩くのを聞いて「リズムをとっているんだな」と想像するのも面白いかもしれません。

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