身近な人の葬儀が終わり、いざ位牌を用意しようと思うと迷ってしまうのがデザイン。伝統的なものもあれば、モダンなものまで様々です。家にある物と揃えたいけれど、デザイン名が分からない…同じデザインでも値段が違うのは何故?大きさや種類に決まりはあるの?相場は?たくさんの疑問が浮かびますよね。
ここでは、そんな位牌の種類に関する様々な疑問にお答えしていきたいと思います。知らなかった位牌の種類をマスターして、自分の理想に近いものを探していきましょう!
位牌の種類のさまざま
在家用位牌の材質と特徴、価格はどれくらい?
「在家」とは、仏教において尼や僧のように出家して僧侶としての生活を送らず、通常の生活を続けながら仏教の教えを学び、実践する一般家庭のことを指します。つまり在家用とは、一般家庭用ということです。材質にはどんなものがあるのでしょうか。
高級な木材である黒檀や紫檀を使用した位牌です。重厚感があり、耐久性に優れています。黒檀は主にアジアの熱帯地域で育つ樹木です。紫檀はアジアの広い地域で見られますが、特に東南アジアがその主な産地となる樹木です。
近年は伐採が進み樹木量が減少しており、森林保護の観点から本黒檀・本紫檀と呼ばれる木材は、市場に僅かしか出回りません。代わりに近縁種が多く流通するようになっており、近縁種の木材が使われていることがほとんどです。これらの木材以外にも手頃な価格代の物として、別の木材を黒檀色や紫檀色に染めていることも、近年では珍しくありません。価格としては、大体10,000円以上からの販売価格が一般的で、種類や素材によって高価になっていきます。
彩色や絵画などの技法を用いて、美しく装飾した伝統的な位牌です。目に鮮やかな色彩を用いながらも、耐久性に優れています。芯材のほとんどはヒバ材で出来ており、塗りの工程数や使用する金箔、蒔絵の有無、装飾彫りの有無によって値段が大きく異なってきます。
広く普及している塗り位牌は、多くが合成漆を使用し工程数が一段階少なく、中塗り工程で仕上げられることが特徴です。主に海外で製作されており、手頃な価格で入手することが可能です。およそ10,000円程度から位牌本体を入手することができ、100,000円以内に費用を収めることが可能です。
上等品の塗り位牌は、合成漆を使用していますが、塗りや箔押しの工程を国内で行います。普及品の位牌よりも塗りの工程数が多く、中塗り工程と磨き作業の後に、上塗り工程が加わり仕上げられます。塗りの面が細部まで丁寧に仕上げられるのが特徴です。一般的に、20,000円程度から本体を購入することができ、寸法や装飾によって100,000円以上から200,000円程度かかる場合もあります。
最高級品の塗り位牌は、本漆を使用し、ヒバ材の中でも上等な物を使用した、完全国内生産の位牌です。多くは日本の伝統的技術として広く知られる、輪島塗の位牌を指します。輪島塗は通常よりも塗りの工程が多いことで知られ、より堅牢で重厚感があることが特徴です。製作にも時間がかかる為、価格帯も100,000円程度から500,000円程とかなり高額になることが一般的です。
モダンなデザインの位牌全般を指し、従来の形に囚われない自由なデザインが特徴です。アクリルやガラス、金属など、様々な材質の物が存在しており、その店舗オリジナルの商品である物やデザイナーブランドの物、ペット用も多くあります。近年の家具調仏壇や仏具の流行に伴い、より自然に暮らしの場になじみやすいことも特徴です。値段も材質によってさまざまです。
一般の家庭で使用する位牌のおおまかな種類は、上記の材質の物が多いでしょう。寺院である場合や家庭に特別な慣習がある場合は、ここにはない特殊な材質の位牌を用意する必要がある為、事前に確認をすることが大切です。
位牌の形状の違いと注意点
位牌には材質の他にも、形状にいくつかの種類が存在します。ここでは代表的な位牌の形状別に、種類の名前をチェックしていきたいと思います。
春日型位牌
春日型は、札の上部が半円状に緩くカーブを描いている位牌札を持つものの事を指します。シンプルな造りですが、伝統的に多くの位牌にこの形が使用されています。
春日型の、基本の形の位牌です。伝統的な形の中ではシンプルな造りのもので、最も入手しやすいものとなっています。材質には塗り、唐木が存在します。
位牌の台座部分に、蓮の花型の台が付くものです。春日位牌よりも華やかな印象でありながら、シンプルにまとまった造りとなっています。材質には塗り、唐木が存在します。
角切型位牌
角切型(すみきりがた)は、札の上部が葵の花の様に、三つ山を形作っている位牌札を持つものの事です。勝美型(かつみがた)と呼ばれることもあります。全体的に見た目が華やかな印象になります。
角切型の基本の形の位牌です。伝統的な形でもあり、角切型の中では入手しやすい位牌です。台座の最下層が猪の目(ハート型)足になっているものが多く存在します。材質には塗り、唐木が存在します。
形状の名前の通り、基本の形の位牌です。勝美型とよく似ていますが、台座の最下層が丁足になっているものが多く見られます。材質には塗り、唐木が存在します。
猫の手足のような丸みを帯びた台座が特徴的な位牌です。勝美や葵角切と比べて、札部分が幅広のタイプの位牌で、夫婦連名など複数人を記したいときに役立ちます。また種類が多く、位牌の等級によって札の形が春日型になることもあります。材質には塗り、唐木が存在します。
その他形状の主な位牌
春日型、角切型を踏襲しながらも、他の形状を持った位牌も存在します。
位牌の形状のなかで最もシンプルな形状の位牌です。材質は塗りのみですが、モダンな形状からどんな場面にも合わせやすい位牌です。春日型や角切型と違い、金箔での縁取り部分が無い為、通常の横幅でありながらも札面が広く使用できることが特徴です。
材質によって札の形が変わる位牌です。唐木の場合は角切型が一般的となっています。塗りの場合は春日型の札板に似ていますが、札の四方に縁取りがある為、札だけでも華やかな印象を与える位牌です。四方の縁取りの影響から札面が狭くなっています。台座は華やかな彫りを施した6段になっており、総高さが高くなることが特徴です。塗りの場合、価格が高くなると、蓮台に緑色やピンク色といった色彩が付くものも存在します。
札の形は千倉型と同様に、春日型に似ていますが、札の四方に縁取りがある位牌です。台座は5段になっており、台座の最下層が最も丸いデザインになっているのが特徴です。この位牌も、材質が塗りのみとなっています。
繰出位牌
繰出位牌とは、戒名や法名を記した薄い木札を収める箱型の位牌です。手持ちの位牌数が多くなり、祭壇内に収まりきらなくなった際や、小型の祭壇を使用している場合などに便利で、宗派によっては繰出位牌の使用を推奨している宗派もあります。
従来のデザインの場合、形状は材質によって異なります。唐木の場合、形状は春日型、角切型、屋根付きと多岐に渡ります。塗りの場合は屋根付きのみであり、台座の段数やデザインが変わってきます。多くのものは、内蔵の札は8~10枚程度となっています。
モダンタイプの繰出位牌は塗り、唐木、その他素材と様々に存在しますが、従来型のものに比べて内蔵の札枚数が少ないものが多いのが特徴です。
上記の通り、位牌の形状だけでも多岐に渡ります。素材、値段なども参考に、状況にあったタイプを検討することが大切です。
まとめ
いかがでしたでしょうか。ご先祖様の位牌に種類を合わせたい場合も、上記の種類をざっと覚えておけば、店頭で迷ってしまう事も少なくなるかと思います。新しくされたい場合でも、事前に位牌の名前や値段が分かっていると安心ではないでしょうか。お選びになる時には、ぜひこの記事を思い出して、参考にしてみてくださいね。