そもそも金仏壇とはどんな仏壇なのか
金仏壇は、浄土真宗を中心に用いられてきました。しかし現在では、信仰する宗旨に関係なく使われています。金仏壇は創られる工程自体が職人の技を必要とするもので、伝統工芸品としての価値もあり、美しい仏壇です。
そもそも金仏壇が用いられるようになったのには、ご本尊を阿弥陀如来とする浄土真宗が広がったことが大きな原因といわれています。
浄土真宗の普及
浄土真宗では、ご本尊を阿弥陀如来として寺院にお祀りしていますが、信徒に対しても阿弥陀如来像などが授与されるようになります。するとご先祖をお祀りする仏壇に、阿弥陀如来もお祀りすることになったのです。
阿弥陀如来をご本尊とする仏壇となると、自然に極楽浄土を表現するような仏壇が求められ始めました。仏壇の表面に金箔を貼り、光り輝く極楽浄土を表すようになったのです。そして浄土真宗宗徒の仏壇は,とくに金で彩られた豪華な金仏壇が増えてきました。
家にも使われている木材を仏壇にも使用している
見た目はとても豪華な金仏壇ですが、表面に漆を塗り、金箔や蒔絵を施すので、木の特徴が出やすい唐木仏壇よりも安価な木材が使用されることが多くなっています。一般的な住宅にも使われているようななじみのある木材も金仏壇の木材として使用されているのです。
ひのき
日本を代表する銘木であるひのきは、清々しい香りに特徴のある木材です。耐久性にも優れ、虫にも強いことから、寺院仏閣の建物にもよく使用されています。とくに金仏壇で使用されることが多いのは、檜葉(ひば)という種類のひのきです。
けやき
けやきも日本の代表的な木材です。耐用年数が高く、京都清水寺の舞台にも使われています。そのほか、一般的な住宅だけでなく、電柱などにも用いられてきました。
松
松は、加工がしやすくゆがみが少ないことから、金仏壇の彫刻や欄間などに使われることが多い木材です。しかし近年は、伐採制限があるため貴重な存在となっています。
杉
杉は樹齢がもっとも長いといわれる木で、全国各地に植えられています。調温・調湿効果があり、劣化しにくいため家具・日用品などのほか、遠く奈良時代には宝物を保管するための箱の原材料としても用いられていました。
合板・木質繊維版
合板や木質繊維版とは、複数の板を貼り合わせたもので、耐久性は劣りますが、値段を安く抑えることができます。金仏壇にしては値段が比較的安いと思われる場合、この合板などが用いられている場合があります。
安価な仏壇の中には、芯材に合板などを使用していることを表記していないものがあるので、しっかりと確認することが必要です。
表面の仕上げや金箔のランクで値段が変動する
金仏壇の特徴である金箔には、見た目にはわからなくても明確なランクがあります。また、表面仕上げの違いも見た目にはわからない場合がありますが、やはり値段に大きく関係してきます。
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金箔とは?
金箔とは、金を専用の金づちでたたいて薄くのばしたものです。金のみで作られたものが「純金箔」といい、そのほかに銀や銅が混ざった「金箔・本金箔」という種類があります。金箔の主な産地は石川県金沢市周辺です。
金箔のランク
金箔のランクとは、金箔に含まれる金の純度と純金率で決められています。最も高価な本金箔は純度が94パーセントと定められています。本金箔の中でもランクがあり、五毛色・一号色・二号色・三号色・四号色といいます。
表面仕上げとは?
金仏壇は、素材となる木材で仏壇の形を作り、その表面に塗料を塗り、最後に金箔を押して仕上げます。もちろんそのほかに彫刻や蒔絵、金具などさまざまな装飾がほどこされますが、とくに金仏壇全体に関わるものとしては金箔と表面仕上げが大きな影響を与えています。
漆仕上げ
表面仕上げには、漆仕上げがもっとも代表的でしたが、近年は漆の希少性が高まるとともに漆を塗る熟練の職人が減ってきています。そのため漆仕上げは高価な金仏壇に限られるようになってきました。
カシュー仕上げ
カシューとは、カシューナッツが包まれている油を原料として作られた塗料です。漆より値段が安いのに、漆に匹敵するほどの良質さがあり、現在の金仏壇では主流の塗料となっています。
ウレタン仕上げ
ポリウレタン樹脂塗料を用いたウレタン仕上げは、耐水性がありつるつるとした手触りが特徴です。
セルロースラッカー仕上げ
セルロースラッカー仕上げは、速乾性があるセルロースラッカーを使用しています。作業効率がよく大量生産ができることから、低価格の仏壇に使用されています。
職人の腕次第?購入前にチェックしてみよう
金仏壇は、完成するまでに多くの工程を経ています。そしてそれぞれの工程には、熟練の職人が存在し、彼らの技により、美しい金仏壇が仕上がるのです。職人が高度な技を注いだ分だけ金仏壇の値段は高くなりますが、それだけの値打ちがあるということも理解しておきましょう。
金仏壇を作る工程に携わる職人は、次のような方々です。
・木地師(きぢし)木材(木地)で仏壇の形を作り出す職人
・塗師(ぬりし)表面仕上げの塗りを行う職人
・箔押師(はくおしし)金箔を押す職人
・宮殿師(くうでんし)ご本尊をお祀りする宮殿を作る職人
・金具師(かなぐし)仏壇に飾られる金具を作る職人
・彫刻師(ちょうこくし)仏壇に彫刻をする職人
・蒔絵師(まきえし)仏壇に蒔絵で装飾をする職人
このように多くの職人によってつくられる金仏壇は、一種の伝統工芸品ともいえます。ただこれだけの技術を集めた金仏壇は、どうしても高価な金仏壇となってしまいます。そのため大量生産や低価格の仏壇の場合は機械を用いることが多くなりました。
まとめ
金仏壇は、日本の精密な技術が生かされた工芸品でもあります。それだけに高価なものが多いのですが、実際に見て見るとやはりその美しさは格別です。金仏壇の購入をお考えなら、まずは一度本物の金仏壇を見て見ることをおすすめします。さまざまな技術が集まった金仏壇のすばらしさを肌で感じて、納得のいく仏壇選びをしてください。その際、今回の記事が少しでもお役に立てば、光栄です。